老人ホームでの介護は、肉体労働と切り離せない仕事です。高齢者の移動や入浴の介助によって自身の腰痛を患ってしまっている人は、介護者の半数以上とも言われています。
そこで役に立つのが、介助の力を軽くすることのできるボディメカニクスの知識です。ボディメカニクスは身体力学を活用する技術のことで、人の動きの原理や法則に沿って動きを上手く活用することで腰痛などを予防できます。
ボディメカニクスの基本に、要介護者の身体を小さくまとめる、できるだけ要介護者に近づく、支持基底面積を広くする、重心を低くする、水平に移動する、体を捻らない、大きな筋肉を使う、というものがあります。なお、支持基底面積とは床に接する部分の面積のことで、介助時に足幅を肩幅くらい広く取ると安定感が増し、体の負担を軽減できます。
介助でよくあるベッドから起き上がらせるという場面では、仰向けの状態になった要介護者におへそを見てもらうようにしましょう。
そうすると首が浮くので、そのタイミングに合わせて肩甲骨の辺りに腕を差し込みます。そして、体を密着させて支えてあげればすんなりと起き上がることができます。
さらに椅子から立ち上がるときの介助では、要介護者に足を少し引いてもらいお辞儀をしてもらいましょう。
するとお尻が持ち上がるので、少し背中を支えてあげるだけでスムーズに立ち上がれます。
このように、介護者が全ての力を使って介助するのではなく、要介護者の力と合わせることで、無理のない介助を実現することができます。